藤慶アートのプロデュース(木版画の技術をシルク版画に)

 彩色の浮世絵には絵画にはない独特の世界があります。
 その特徴は一色づつ色彩の版を重ねることによって、絵画にはない色の制約があります。絵画では無限の色が使えますが、浮世絵では版木の制約のため10色とか、20色になります。
 そこで、本来ならば微妙に違う色が統一的な単調な色になります。例えば「両国橋の夕陽見」を見れば、空の色、川の色が同じ色調になっていることがわかります。絵画でこの場面を描いたならば、空の色、川の色は、動きを表すため異なった無数の色調からなっていたはずです。
 そのため浮世絵の世界は常に現実離れした、お伽の世界のように描かれます。それこそが現実離れした「浮世」になるわけです。特に風景を好んで描いた北斎と広重はそのような浮世を見せてくれます。この二人の絵は陽性で、そこにはファンタジーがあります。江戸末期の日本は実際には災難続きで庶民の暮らしは決して良くなかったにもかかわらず、その絵はすべてといっていいほど楽天的です。
 藤慶アートに展示している水野浚治の彩色切り絵は浮世絵と同じく、色の制約の下で浮世絵風に作られたものです。わたしはその風合いを出すため版画的技法によってこれらの作品をプロデュースしようと考えました。
 しかし現代では浮世絵と同じ木版画は技術的に無理であるため、わたしはそれをシルク版画(謄写版による版刷り)で行おうと思いました。そこで版画印刷のプロフェッショナルである上原晃先生に依頼したところ、先生はその趣旨を深く理解してくださり、原画の色分析、版下の設計、印刷を行い、さらに切り絵製作者である水野浚治と色校正を行い、完ぺきな切り絵版画を制作してくださいました。
 その技術がいかほどのものであるかは、「文明開化の夜明け」を見ればよくわかります。版画に寸分のずれがないことはもちろんのこと、この1枚の版画を作るため、33回のすりを行っているのです。しかもその版の色調整を全体を考えて行っているのです。このような高度な版画を制作する人はこの世界でもほとんどいないのではないでしょうか。版を摺る職人も現在ではほとんどいません。
 この版はすべて限定200部です。それにエディションがついています。シルク版画の特徴は油性の顔料を使っているため、退色しないことにあります。したがってどこにでも安心して飾り絵を楽しむことができます。

製作過程

藤慶アートのプロデュース(シルク版画の技術を写真版画に)

 われわれはアートディレクター上原晃先生のご協力により、切り絵が彩色シルク版画7点(「おいらん道中」、「文明開化の夜明け」、「もみじ」、「灯篭讃歌」、「花火」、「九重高原」、「日本の模様」)を製作してきました。
 これらの作品は水野浚治の切り絵の風合いを再現したもので、少し距離を置いてみると本物の切り絵と区別がつきません。それもそのはずで、水野浚治は版画の風合いを出すように彩色切り絵を制作してきたからです。わたしが切り絵からシルク版画を制作したのは、版画による独特の絵の面白さにこだわったからです。
 さらに、彩色木版画は日本独特のもので、古い時代の西洋の版画は採色をするとき1枚の銅版画のような版を作り、その上に色を付けるやり方をとっていました。何枚もの色版を重ね、最後に墨版を重ねるというやりかたは浮世絵独特のもので、そこに彫師、摺師の職人的技術が必要になります。
 すべての職人的技術がそうであるように、彫師、摺師の職人的技術も時代とともにすたれていきます。中でも、「文明開化の夜明け」は33回も摺っていますが、このような技術を持った職人は現在ではほとんどいません。われわれの製作したシルク版画は技術的に二度とできないものになっていると思います。
 他方、画像処理技術の進歩により、色分解を行い、コンピュータ上に版を作り、シルク版画で行うように色処理、線の処理ができるようになりました。この技術の第一人者である尾崎正志氏のご協力により、切り絵「大仙院の庭」を写真版画として製作してみたところ、シルク版画とほとんど区別できない素晴らしい作品ができました。
 写真版画の魅力は版をコンピュータ上で保存するため、製作枚数の制約がないことです。いったん版を作ってしまえば、いつでも好きなだけ製作することができます。したがってシルク版画と比べてコストが安くなります。
 藤慶アートでは広重、水野浚治、松浦三千世の作品を写真版画によってプロデュースしていこうと考えています。すべて佐田版画工房で製作されたもので、観察すればするほど、これが写真版画とは思えない繊細なニュアンスで再現されていると思います。紙は和紙の風合いのコットン紙を用い、ほぼ原画の浮世絵、切り絵、草絵のイメージとして、鑑賞していただけると自負しております。

藤慶アート値段表

藤慶アートで扱う作品には説明がついています。(英語解説付き)

製版/校正料版権画像使用料販売価格額装価格
広重、北斎、金次郎13,000円5,000円18,000円30,000円
切り絵/草絵 カラー版画印刷
色紙5,000円10,000円15,000円18,000円
標準サイズ13,000円10,000円23,000円35,000円
大判サイズ18,000円10,000円28,000円45,000円
切り絵 シルク版画(単色)標準5,000円10,000円15,000円27,000円
切り絵 シルク版画(単色)大判15,000円10,000円25,000円42,000円
切り絵 シルク版画(20摺)標準30,000円10,000円40,000円52,000円
切り絵 シルク版画(33摺)標準40,000円10,000円50,000円62,000円
切り絵 シルク版画(20摺)大判50,000円10,000円60,000円77,000円
切り絵 シルク版画(33摺)大判60,000円10,000円70,000円87,000円

版画にはエディションがついています。

浮世絵・切り絵はがき1枚100円
特製紙版
歌川広重「東都八景」絵葉書8枚セット1,000円
水野浚治「創作切り絵」8枚セット1,000円
切り絵画集
水野浚治「切り絵で見た日本」5,500円

額縁の注文承ります。マットは4色から選べます。

黒檀製高級額
マット付き12,000円
大判 マット付き17,000円
色紙額
高級額(木製)5,000円
掛け軸
切り絵(高砂・鏡獅子・連獅子)各 20,000円
浮世絵(月に兎)23,000円
二宮金次郎直筆23,000円